東京・代々木公園のイタリアンレストラン「LIFE」などでオーナーシェフを務める相場正一郎さん。 (Instagram:@aiba.shoichiro)
料理はもちろん、カルチャーを作る飲食店としても注目を集めています。週末は家族で栃木県那須町にある「山の家」で暮らす二拠点生活を送っている相場さん。那須での過ごし方、カメラと料理、相場さんの多趣味なライフスタイルについてお伺いしました。
現在のキャリアについて教えてください。
高校を卒業してからイタリアに行き、料理の修行をしました。25歳ぐらいで帰国し、原宿で新規オープンのイタリアンレストランに携わりました。その後、自分のレストラン「LIFE」をオープンし、オーナーシェフとして今でも時々お店に立っています。
シェフを目指すきっかけは何だったのでしょうか?
うちは家族全員が飲食業に関わっていて、自然な流れで自分もこの道に進みました。実家は地域に根差したお惣菜屋を経営していて、その影響も大きかったですね。中学生の頃、ちょうど「料理の鉄人」が流行っていて、イタリアンブームだったこともありました。それで父親に勧められてイタリアに修行に行くことを決めました。
イタリアではどんな生活を送られていたのですか?
いくつかのレストランで働きましたが、一番長くいたのはフィレンツェにある「バンビーノ」というお店で、3年ほど滞在しました。当時は日本でもイタリアファッションが流行していて、日本人のバイヤーの方がよくお店に来ていいたんですよ。そこで、最初に原宿でシェフを務めたレストランのオーナーと出会ったんです。そのオーナーがアパレル業界の方だったことで、ファッション業界とのつながりも生まれました。
「LIFE」を始めたきっかけを教えてください。
原宿のレストランでの経験をベースにオープンしました。洋風居酒屋のようなカジュアルな雰囲気を持たせるため、メニューも少し変更しより気軽に利用できるお店を目指しました。
「LIFE」といえば、お洋服や雑貨も扱われていますよね。
そうですね。周りの方から声をかけていただくことが多いんです。「新しいお店をオープンするからシャツを作りたいんだよね」みたいな話をすると、「一緒にやろうよ」と言ってもらえたりして。自然な流れで始まったコラボレーションが多いですね。この間もいつも使っているエプロンを買い行ったら、企画変更で無くなっていたんです。そしたらお店の方から「言ってもらえれば作りますよ」って言ってもらって。「じゃあいいんですか?」って話になり。自分でエプロンを1個2個買いに行ったつもりが、気づいたらそういう話になってるってことがよくあります。問い合わせて何かを作るって感じではなく、自然に広がっていく感じですね。
OUTERKNOWNのブランケットシャツとの出会いは?
OUTERKNOWNは友人に勧められて知りました。初めてブランケットシャツに袖を通したときは、ざっくりしていた重たい、固いシャツだなと思いました。でも、2~3回洗って使ううちに馴染んできて、いい感じにクタっとしてきて気に入っています。サーフ系の方と会うと「そのシャツ、LAですごく人気なんだよ」と声を掛けられた事もありますよ。
現在は東京と那須の二拠点生活をされていると伺いましたが、そのきっかけや那須を選んだ理由を教えてください。
お店を始めて10年目くらいだったかな。ちょうど子どもが生まれた頃で、東京以外にも拠点を持ちたいと思うようになったんです。週末に色んな場所を開拓するのもいいけれど、どこか1カ所、集中して行ける場所が欲しくて。それで那須に決めました。避暑地で気持ちが良いですし、僕自身も栃木の足利出身で地元にも近かったので。
那須ではどんな時間を過ごしていますか?
最初は「週末ハウスに行く!」っていう特別感があって、「これもやりたい、あれもやりたい」と欲張っていました。でも最近は落ち着いてきて、映画を観たり本を読んだり、東京と同じようにゆったり過ごしていますね。
カメラも趣味だと伺いました。
イタリアにいた頃から一眼レフのフィルムカメラを持っていて、よく撮ってました。その後、10年くらい前にライカを手に入れて、また本格的に撮り始めた感じですね。今はデジタルとフィルム両方使っています。最近は息子もカメラに興味を持ち始めて、一緒に撮影することが増えました。今年の夏休みには、息子と2人でイタリアに行って、息子はフィルム、僕はデジタルで、2人でライカをぶら下げてカメラ散歩を楽しんできました。
お店でカメラのワークショップも開催されていますよね。
そうですね。料理教室もやっていますが、カメラ好きが集まるワークショップも開催しています。僕のカメラ仲間の一人に詳しい方がいるので、その方を講師に招いて、参加者同士で教え合ったりする場になっています。
相場さんの多趣味なライフスタイルから人と人との繋がりが生まれるのですね。
趣味や、自分の好きなものに共感してもらえるって1番嬉しいじゃないですか。自分が好きなことを好きって言われることって、自分を好きって言われるよりも嬉しい。お店を盛り上げるために集客しなきゃっていう意識ではなくて、僕ら「LIFE」は、好きなものが好きな人たちが集まる、 集めたいという気持ちでやってるんですよね、いつも。 とは言っても上手く行く事ばかりではないし、まさにワークショップは参加者が1人も来ないところからスタートしました。そんな時はスタッフ参加でやって、自分達がまず楽しむという事を体感していて。そこから少しずつお客様が増えていった感じです。
最後に、今後シェフとしてどのような人生を歩みたいか教えてください。
「LIFE」もオープンして21年が経ち、今は自分のキャパシティを見据えながら動いています。週3日くらいお店に立つことで自然に生まれるスタッフとのコミュニケーションが本当に心地いいです。結局は「人」が大切なんです。お店の経営で一番大切なのは人との関わりですね。スタッフの管理も含めて、自分の目が届く範囲で無理なくやっています。正直、最近は経営者としても料理人としてもやり切った感があって、今はスタッフが独立してお店を持ち、成功する姿を見るのが本当に嬉しいですね。
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相場正一郎 あいば・しょういちろう
1975年、栃木県生まれ。1994〜2000年にイタリア・トスカーナ地方で料理修行後、都内で店長兼シェフを経て、2003年に代々木公園にカジュアルイタリアン『LIFE』をオープンする。現在では東京・代々木公園をはじめ、全国に5店舗のレストランを経営。カルチャーを作るレストランとしても注目を集めている。筑摩書房『世界でいちばん居心地のいい店のつくり方』、マイナビ『LIFEのかんたんイタリアン』、ミルブックス『30日のパスタ』『30日のイタリアン』『ライフという名のレストラン』など著書も多数出版。
PHOTOGRAPHER: Ryo Shimizu(@ry0shimizu)